新卒で「やりたい仕事がない」ときの就活の進め方
仕事の選び方と次の一歩
「周りは志望業界が決まっているのに、自分にはやりたい仕事が思い浮かばない」。就活が本格化するなかで、そんな焦りを感じている人は少なくありません。ですが、やりたい仕事がない状態は、決して珍しいものではありません。
やりたい仕事は、就活を始める前に決めておくべきものとは限りません。仕事の中身を知り、自分が大切にしたいことを少しずつ言葉にしていくなかで、見えてくることもあります。この記事では、次の内容をまとめました。
- やりたい仕事が決まっていなくても就活を進める3つの考え方
- 通信機器専門商社で働く先輩2人の仕事の選び方
- 仕事の中身を知るための具体的な行動
「何から始めればよいか分からない」という人が、最初の一歩を考える手がかりになれば幸いです。
やりたい仕事が決まっていなくても
進められる就活の考え方
「やりたい仕事が決まるまで、就活は始められない」と考える必要はありません。実際の学生は、仕事内容以外のさまざまな基準で企業を選んでいます。ここでは、やりたい仕事が決まっていなくても就活を進めるための考え方を3つ紹介します。
企業選びの基準は
「やりたい仕事」だけではない
マイナビの「2027年卒大学生就職意識調査」(有効回答37,160人)では、企業を選ぶ際にどのような企業がよいかを、あてはまる項目から2つまで選んでもらっています。上位の結果は次のとおりです。
| 企業選択のポイント | 割合 |
|---|---|
| 安定している会社 | 55.4% |
| 給料の良い会社 | 26.6% |
| 自分のやりたい仕事(職種)ができる会社 | 25.5% |
「やりたい仕事(職種)ができる会社」を選んだ学生は25.5%で、4人に1人ほどです。2027年卒では、「給料の良い会社」が、これまで2番目に多かった「やりたい仕事ができる会社」を初めて上回りました。企業選びの基準は人によってさまざまで、仕事内容だけで決めている学生ばかりではないことが分かります。やりたい仕事が決まっていないことは、企業を選べないことを意味しません。待遇や働き方、社風など、判断に使える材料はほかにもあります。
内定者への調査もあります。マイナビの「2027年卒 内定者意識調査」(有効回答1,629人、2026年7月発表)では、入社予定先を選んだ最終的な決め手として、次のような魅力に関する声が多く見られました。
- 社員の人柄・社風
- 事業の独自性
- 働き方
人事担当者や社員との交流を通じて企業に魅力を感じたという声もあり、実際に話してみて決める学生も多いようです。また、就活を終えた学生では、活動を進めるうちに第一志望が変わったという回答の割合が高いと報告されています。やりたい仕事が最初から決まっていなくても、活動のなかで志望先が定まっていく人は少なくありません。
「やりたいこと」より「やりたくないこと」と
譲れない条件から絞る
やりたいことが浮かばないときは、反対側から考える方法があります。マイナビの同じ調査で、行きたくない会社を2つ選んでもらったところ、「ノルマのきつそうな会社」が39.2%、「転勤の多い会社」が33.3%でした。避けたいことは、やりたいことよりも言葉にしやすく、それだけで選択肢をかなり絞れます。就活系のメディアでは、次の3つのステップがよく紹介されています。
| ステップ | やること | 考え方の例 |
|---|---|---|
| ① やりたくないことを書き出す | アルバイトやゼミ、サークルで嫌だった場面を挙げ、理由を考える | 上下関係が厳しい環境が苦手なら、フラットな人間関係の職場を探す |
| ② 自然にできることを振り返る | 部活や活動で、無理なく担っていた役割を思い出す | 意見が割れたときに調整役になることが多かった |
| ③ 譲れない働き方の条件を決める | 勤務地、転勤の有無、働く環境などに優先順位をつける | 転勤は避けたいなら、勤務地が限られる企業を探す |
ここで大切なのは、完璧な答えを出そうとしないことです。たとえば、アルバイトで「ありがとう」と言われた場面が印象に残っているなら、お客様の反応が見える仕事に魅力を感じる可能性があります。長時間の立ち仕事がつらかったなら、働く姿勢や環境も条件の一つになります。こうした小さな気づきが、仕事選びの手がかりになります。メモに書き出して見返せるようにしておくと、複数の企業を比べるときにも役立ちます。
「やりたくないこと」と「自然にできること」が見えてくれば、やりたい仕事そのものが決まっていなくても、検討する企業の範囲は狭まっていきます。ただし、条件で絞った企業の中でも、仕事の中身は会社や職種によって大きく異なります。そこで次に、仕事の中身を具体的に見るための視点を紹介します。
職種名ではなく
「誰とどう関わるか」で仕事を見る
「営業はきつそう」「事務は地味そう」のように、職種名のイメージだけで仕事を判断すると、実際の仕事とのズレが生まれやすくなります。同じ営業でも、個人のお客様に商品を販売する仕事と、法人の課題を聞いて解決策を提案する仕事とでは、向き合う相手も求められる力も異なります。ワンキャリアによると、BtoB(企業間取引)の営業では、顧客の課題をヒアリングして解決策を提案する「課題解決型」のアプローチが主流とされています。
そこで、職種名ではなく、次の3つの問いで仕事を見てみましょう。
| 問い | 考えること |
|---|---|
| 誰と関わりたいか | 個人のお客様、企業、社内のメンバーなど |
| どんな関わり方をしたいか | 自分から提案する、相手の話を聞いて支える、間に入って調整するなど |
| どんな形で役に立ちたいか | 商品やサービスを提案する、困りごとを解決する、専門知識や技術を提供するなど |
たとえば、お客様の話を聞いて整理することが好きな人は、課題解決型の営業に向いている可能性があります。専門知識を身につけながら、現場で直接感謝されたい人は、お客様と接する技術職も選択肢になります。
このように、関わり方まで見ると、職種名だけでは分からなかった向き不向きが見えてきます。もちろん、「人と関わる」ことは、仕事選びの軸の一例にすぎません。「専門性を身につけたい」「働く環境を重視したい」といった軸もあります。自分にとって大切なものは何かを見つけるために、アルバイトやゼミ、サークルでの経験を振り返ってみてください。
「人と関わる」という軸を、経験とあわせて整理する方法は、次の記事で紹介しています。
営業への先入観が気になる人は、営業のイメージを整理した次の記事も参考になります。
知らない仕事に出会う|
通信機器専門商社の先輩はどう仕事を選んだのか
就活では、身近な消費者向けの企業に目が向きがちで、企業を相手にするBtoBの仕事は目に入りにくい傾向があります。ここでは、BtoBの一例として通信機器専門商社を紹介し、テレコムで働く先輩2人がどのように仕事を選んだのかを見ていきます。
就活で見落としやすい、
知名度の低いBtoB企業という選択肢
BtoB企業は、企業を顧客とするため、消費者向けのBtoC企業ほど広告宣伝に力を入れる必要がなく、一般的な知名度が低い傾向があります。学生向けの人気企業ランキングを見ても、上位は消費者向けのBtoC企業が大半を占めており、BtoB企業は目立ちにくい存在です。BtoB企業の中には、業界では広く知られていても、学生にはなかなか届かない会社が少なくありません。就活の企業選びが、身近なBtoC企業に偏りがちだと指摘する媒体もあります。知らない仕事を「やりたい」と思えないのは自然なことで、まずは知る機会を増やすことが、やりたい仕事に出会う近道になります。
学生の志向も、大手企業一辺倒ではなくなっています。マイナビの2027年卒調査では、大手企業志向は50.9%で2年連続の減少、中堅・中小企業がよいと答えた学生は44.0%で2年連続の増加でした。
BtoB企業の一例として、通信機器専門商社の仕事を見てみましょう。テレコムの場合は、次のような仕事です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 扱う商材 | 無線機、ドライブレコーダーなどの車載機器、防犯カメラ |
| 主な提案先 | 物流・警備・交通・自治体などの企業や官公庁 |
| 営業職の役割 | 現場の課題を聞いて、通信機器による解決策を提案する |
| 技術職の役割 | 機器の導入・設定・保守で現場を支える |
テレコムの募集要項には、仕事内容として、法人向けの無線機や車載器の販売、取付工事、保守、システム導入、運用サポートが記載されています。通信機器専門商社の仕事の全体像は、次の記事でも紹介しています。
営業部A.Tさん|業界へのこだわりは薄く、
「お客様と接する仕事」を軸に選んだ
2023年にテレコムへ入社したA.Tさんは、営業部で車載機器の提案やアフターフォローを担当しています。大学時代は居酒屋のアルバイトを4年間続け、発注業務も経験しました。就活では「お客様の声が届く仕事がしたい」という思いがあった一方で、業界そのものへのこだわりは強くなく、お客様と接するポジションがよい、という程度だったと振り返っています。テレコムを知ったきっかけは、当時利用していた就活エージェントの紹介でした。「通信機器の専門商社」と聞いたときは難しそうな印象を持ったものの、お客様に合ったものを自分で選んで提案できるのが専門商社のよさだと人事担当者から聞いて、納得したそうです。
入社後はインサイドセールスを経験し、電話での営業は最初のうち苦手だったといいます。次の日の業務を細かく指示されることはなく、自分で1日の動きを決めるなかで、飛び込み営業のほうが自分に向いていると感じ、自ら選びました。1年目に求められたのは数字よりも、お客様とどのような関係を築けるかで、丁寧なフォローを続けたことが別のお客様の紹介につながった経験もあるそうです。入社時にはすでに個人ノルマをやめてチームで数字を追う取り組みが始まっていたと、本人は話しています。
| 場面 | A.Tさんの経験 |
|---|---|
| 就活での軸 | お客様の声が届く仕事、お客様と接するポジション |
| 入社後に分かったこと | 電話より、直接会って話す飛び込み営業のほうが自分に合う |
| 1年目に求められたこと | お客様との関わり方を学ぶこと、先輩に「教えたい」と思ってもらえる素直さ |
A.Tさんの例は、業界を絞り切れていなくても、「どんな人と関わりたいか」という軸があれば、仕事の中身を知るなかで納得して選べる場合があることを示しています。詳しいインタビューは、次の記事で読めます。
サービス部D.Kさん|希望と違う配属から
「一番合っている」仕事に出会った
2024年にテレコムへ入社したD.Kさんは、経済学部経営学科の出身で、入社前は電気や車の知識がほぼゼロでした。ゲームや自作パソコンが好きで「機械を扱う仕事」に関心を持ち、就活のなかで通信機器の業界があることを知ったといいます。会社説明会で社員の対応が丁寧だったことや、社内の雰囲気が柔らかかったことが入社の決め手でした。就活の軸は、居酒屋のアルバイトで感じた「ありがとう」と言われる喜びから、お客様に感謝される仕事がしたいという思いでした。
入社時は別の部署を希望しており、サービス部の工事を担当するチームへの配属が決まったときは、正直「思っていたのと違う」と感じたそうです。入社前はオフィスでパソコンに向かう仕事を想像していましたが、現在は現場に出て、トラックへのドライブレコーダーや無線機の取り付けを担当しています。先輩のそばで見て手伝い、積極的に質問するなかで知識を身につけ、今では一人で現場を任されています。サービス部の仕事のほうが自分に合っていると、今は感じているそうです。
| 時期 | D.Kさんの気持ち・状況 |
|---|---|
| 就活中 | 「機械を扱う仕事」に関心があり、お客様に感謝される仕事がしたいと考えていた |
| 配属決定時 | 別の部署を希望していたため、「思っていたのと違う」と感じた |
| 現在 | 現場でお客様に直接感謝されることがうれしく、サービス部が自分に合っていると感じている |
ただし、配属が希望どおりになるとは限りません。マイナビ転職が2024年卒の新入社員800人に行った調査では、勤務地・配属先がともに希望どおりだった人は59.9%、「配属ガチャに外れた」と感じている人は11.1%でした。入社前に、配属がいつ、どのように決まるのかを確認しておくことが大切です。
テレコムは募集要項で、配属先を本人の希望・適性・会社の状況を考慮して決定すると記載しています。A.Tさんと同じく、アルバイトでの経験が就活の軸のヒントになっている点にも注目です。D.Kさんの1年目の成長については、次の記事で詳しく読めます。
「やりたい仕事」に近づくための
次の一歩
考え方を整理しても、実際の仕事を知らなければ、「やりたい」かどうかは判断できません。ここでは、仕事の中身に触れるための行動と、企業の人に直接聞くときのポイントを紹介します。
インターン・説明会・OB/OG訪問で
「仕事の中身」に触れる
就活系のメディアでは、やりたい仕事が見つからないときの行動として、合同説明会やインターンシップでさまざまな仕事に触れること、説明会で実際に働く社員の話を聞くこと、OB・OG訪問の機会を増やすことなどが紹介されています。ネットの情報だけでは分からない仕事の中身や職場の雰囲気は、人の話を聞いたり、実際に体験したりすることで、具体的にイメージしやすくなります。やりたい仕事が決まっていない段階では、1社を深く調べるより、複数の仕事を広く見ていくほうが、自分の関心に気づきやすくなります。説明会やインターンは、仕事の内容だけでなく、社員の話し方や職場の空気を知る機会でもあります。
| 行動 | 得られること |
|---|---|
| インターンシップ・仕事体験 | 仕事の流れや職場の雰囲気を体験できる |
| 会社説明会・合同説明会 | 知らなかった業界や企業に出会え、社員の話から働くイメージをつかめる |
| OB・OG訪問 | 実際に働く先輩に、1年目の仕事や働き方を聞ける |
| 大学のキャリアセンター | 業界・職種を知るセミナーや、企業のプログラムを紹介してもらえる(内容は大学による) |
大学のキャリアセンターでも、たとえば早稲田大学が学部1・2年生向けに、業界・職種を広く知るセミナーを開いた例があります。志望業界が決まっていなくても、気になったキーワードから企業を探し、まずは参加してみることが、やりたい仕事に出会う第一歩になります。参加したあとは、おもしろいと感じた点と合わないと感じた点を書き留めておくと、次に企業を選ぶときの判断材料になります。
採用担当者や社員に直接聞く|
カジュアル面談で確かめたいこと
説明会では聞きにくいことも、少人数の面談であれば率直に聞きやすくなります。先ほど紹介したマイナビの内定者調査でも、人事担当者や社員との交流を通じて企業に魅力を感じたという声が報告されています。仕事内容の説明だけでは分からない、働く人の雰囲気や価値観を知れることも、直接話す大きなメリットです。質問をするときは、仕事の事実だけでなく、働く人がどう感じているかにも目を向けると、入社後の姿をイメージしやすくなります。
やりたい仕事が決まっていない段階では、「何を聞けばよいか分からない」と感じるかもしれません。次のような質問を用意しておくと、仕事の中身と自分との相性を確かめやすくなります。
- 1年目は、どのような仕事をしますか
- 配属はどのように決まりますか。本人の希望は考慮されますか
- 数字の目標は、個人ごとですか、チームですか
- どのような人が活躍していますか
- 文系や未経験でも、知識は身につけられますか
聞いた内容は、そのままにせず、自分ならどう感じるかを書き留めておくと、ほかの企業と比べるときの判断材料になります。
判断材料を増やすと
やりたい仕事は見えてくる
やりたい仕事がない状態は、決して珍しいものではありません。そして、企業選びの基準は、やりたい仕事だけではありません。やりたくないことや譲れない条件から絞り、職種名ではなく「誰とどう関わるか」で仕事を見ていくと、決め切れていなくても就活を進められます。
やりたい仕事がないのは、判断の材料が足りていない状態です。仕事の中身に触れ、人に聞き、自分が大切にしたいことを少しずつ言葉にしていけば、納得できる選択に近づけます。まずは、気になる仕事や企業を1つ選んで、話を聞いてみるところから始めてみてください。
